ホウ酸塩とは/ホウ酸塩

腐敗菌の点検と処理

ホウ素系のサプリメント

 ホウ素は原子番号5の元素で、天然には酸素と結合したホウ酸塩として存在します。

 ホウ素は、私たちの健康にとっても重要で、成人は水や食事から一日1~3mgのホウ素を摂取しています。ホウ素は代謝や骨の健康、脳の機能への役割が確認されており、最近では、ホウ素不足を補うためのサプルメントも販売されています。

 又、ホウ素は植物にとって必須元素で、特に野菜や果実の生育には欠かせません。世界で肥料として使用されるホウ酸塩は年間6万トンで、毎年4%のペースで増加しています。

 ホウ酸塩は地下の鉱脈から採掘されており、世界最大のホウ酸塩鉱脈は、アメリカとトルコの砂漠地帯で発見され、原石は、精製され、製品として出荷されます。世界で、年間、150万トンのホウ酸塩が、農業、長繊維グラスファイバー、過ホウ酸塩/洗剤、セルロースファイバー断熱材、断熱用グラスファイバー、ホウ珪酸ガラス、セラミック/フリット、物流、などに使用され、木材保存剤として使用されるホウ酸塩は、世界で年間10,000トン程度と推定されます。ていますが、主要な用途とパーセントは次のようになります。

[写真]ホウ素サプリメント

★ ミニ雑学

ホウ素は私たちの身のまわりのあらゆるところに存在しますが、『呪いの宝石』と呼ばれアメリカ・スミソニアン博物館に展示されている世界最大といわれる45.52カラットのブルーダイヤ「ホープダイヤモンド」にもホウ素が含まれていることが最近の調査でわかりました。

ホウ酸塩

 ホウ酸塩は私たちの周囲や自然のいたるところに存在します。植物のには欠かせない微量元素として、成長を促進する反面制御することもできる、エネルギー代謝を調節できる効果的な保存剤で、細胞を殺さず成長を停止させる静生物剤です。

[効果と実績] ハエ

 ホウ酸塩は、微生物や害虫に対する静生物剤として作用し、安全な制御方法として使用されており、天然のホウ素化合物は、菌類、藻類、バクテリアや、ゴキブリ、甲虫、アリ、スズメバチ、ノミ、シロアリ、ハエ、ガ、などの昆虫に対し効果的に作用されます。

 農業の肥料としては病害に対する抵抗性、林業では針葉樹の"Formes病"の制御や、植林されているゴムの木やその加工材(家具などを穿孔甲虫からの保護かに使用され、木造建築ではシロアリから建物を守るため、100年前からニュージーランドやハワイ、アメリカ南部、ヨーロッパなどで広く使用されています。

[国内の使用]

 日本でも以前、ホウ酸塩は木材防虫処理に大量に使用されていました。最盛期は、1980年代の半ばで、年間40万立米のラワン材がホウ酸塩処理され、年間のホウ酸塩消費量は480トンと推定されます。
 尚、ホウ酸塩の最大の用途はガラス原料で、総需要の50パーセントを占め、農業分野では年間2000~3000トンのホウ砂が肥料として果樹園や野菜畑に散布されています。

木材劣化生物とホウ酸塩

 生物は、細胞内で栄養分を燃やしてエネルギーに変えています。これを代謝といいます。細胞中のホウ酸濃度が高まると、代謝反応がストップし、生物は餓死することになります。  しかし哺乳動物では、血液に溶けた過剰のホウ酸塩は、腎臓の働きで体外へ排出されます。このために哺乳動物に対するホウ酸塩の急性毒性は微弱で、ホウ酸塩は人やペットには安全で、木材劣化生物には厳しい理想的な木材保存剤といえます。

 ホウ酸塩を木材保存剤として利用するには、木材にホウ酸塩水溶液を含浸させます。シロアリや食材甲虫がこの木材を摂食すると、細胞中のホウ酸濃度が高まり死ぬことになります。又、食材甲虫がホウ酸塩処理した木材中に産み付けた卵は、孵化率が低下します。腐朽菌が木材に侵入すると、ホウ酸塩は細胞膜を通して拡散し、代謝阻害を引き起こします。

 ホウ酸塩が劣化生物を制御するには、木材内部のホウ酸塩濃度が一定の値を超える必要があります。この値を毒性閾値といいます。代表的な木材劣化生物に対するホウ酸塩の毒性閾値は(表1)のようになります。

(表1) ホウ酸塩の毒性閾値いきち
木材劣化生物 毒性閾値 (kg/m3 BAE)
ホウ酸換算 ティンボア
 イエシロアリ 3.0 2.5
 ヤマトシロアリ 3.0以上 2.5以上
 腐朽菌 1.0~1.5 0.8~1.2
 食材甲虫 1.2 1.0

※表1から、シロアリに対するホウ酸塩の毒性閾値は、他の木材劣化生物に比較してはるかに高く、シロアリ対策として十分な濃度のホウ酸塩を含浸させれば、満足すべき防虫、防腐効果が得られます。 → 4寸角柱の場合17%以上のdot水溶液×2回処理(4回塗り)

ホウ酸塩の木材保存剤

 木材保存剤は、(表2)のように固着型と拡散型にわけられ、ホウ酸塩は拡散型に分類され、木材に塗布や加圧処理したのち内部へと浸透していきます。

  • 固着型保存剤
    • 木材組織中に注入すると有効成分が固化し、組織と結合し、一旦注入すると長期間水に曝しても溶け出す(溶脱する)ことはありません。
  • 拡散型保存剤
    • 木材組織と強固に結合することがなく、木材の含水率が高まると、水を媒体として高濃度側から低濃度側へ移動(拡散)します。

古い建物の下準備

  • 埃の除去
    • 塗布面の埃や汚れを車の洗車ブラシや雑巾などで水洗いで除去してださい。
      ※木部にが濡れ他状態で、『ティンボアPCO』を塗布しても、ホウ酸塩は、水分の方へと浸透していきますので、問題はありません。かえって木材内部に浸透するため効果が上がります。
    • マシンカットの角ログの外壁であれば、高圧洗浄機で水洗でで除去することもできます。
      ※ハンドカットの丸ログや、横積みの実の状態が悪い角ログなどでは、水が室内側にしみる恐れがあり避けてく下さい。
(表2) 固着型と拡散型の比較
 【固着型】 【拡散型】
  ACG、銅アゾール、NZN、
CCA※など
ホウ酸塩、無機フッ化物

結合 木材中で固まり組織と結合 木材と結合しない。水分を媒体に移動
溶脱 水に長時間浸漬しても溶脱しない 水に長時間浸漬すると溶脱する
水にかからず、地面と接触しない部分
使用用途 屋内、屋外とも限定されない 屋外では耐水塗装処理し接地しないこと
浸透 木材表層部10mmまで浸透 屋外では耐水塗装処理し接地しないこと
注入 樹種により異なる 拡散により材の中心部まで浸透
水率に依存する

※日本で認定されている保存剤は、原則として固着型でしたが、2004年のJIS K 1571の改正で拡散型保存剤認定されました。

DOT(ホウ酸塩ベースの表面処理剤)

 DOT水溶液やDOTとエチレングリコールの縮合物は、合成殺虫剤系の表面処理剤と比較し、安全性、耐久性に優れているので、新築や既設住宅の木部処理に広く使用されています。

 木材の表面に塗布されたDOT(ホウ酸塩)は、時間とともに木材中心部へ浸透していきますが、分解や蒸散はしません。溶脱などで失われない限り、効果は永久に続きます。

時間経過による木材内部の変化を比較

[合成殺虫剤系]

1)表面塗布後→2)表面より約1cmまで浸透し→3)その後は分解・蒸発し→4)約5年で効果がなくなる

農薬系シロアリ駆除のしくみ:木材表面塗布→ 木材浸透→ 分解・蒸発→ 約5年で効果がなくなる
[ホウ酸塩系]

1)表面塗布後→2)時間と共に内部へ拡散し→3)年月の経過に伴い表層部が薄まるが→4)再塗布で高濃度になり効果が安定

ホウ酸系シロアリ駆除のしくみ:表面塗布→ 内部へ浸透→ 表層部が薄まる→ 安定

DOT拡散状況

ホウ酸塩水溶液の木材浸透・拡散状況※加圧注入後の拡散(養生期間は左から1~5週間)

 ホウ酸塩系表面処理剤は木材中で分解せず、効果は永続します。しかし、拡散によって徐々に内部へ移動するため、表層部での防腐防蟻効果は低下し、再処理が必要となります。再処理を不要にするためには、高濃度の処理材を塗布する必要があります。

『テインボアPCO』高濃度25%処理液の使用で、2×4規格材なら1回の塗布で長期間の保護が期待できます。

米国のNisus社は、グリコールボレイト(商品名 Boracare)の処理に対し、12年の保証を実施しています。

 ホウ酸塩表面処理剤は、毒性が低いので、屋内で散布できます。このため、アメリカ乾材シロアリやヒラタキクイムシの防除にも適しています。